数年前、航空自衛隊の元幹部(空将補)でF15戦闘機のパイロットでもあった先輩から、対空戦の話を聞いたことがありました。

F15は航空自衛隊の主力戦闘機。那覇基地に40機が配備されていて、連日、西の空へスクランブルをかけています。
その先輩は「映画で観るような対空戦はありえない」と言いました。F15がレーダーで敵機を捕捉したら、ロックオンしてミサイルを発射します。そうすれば、やがて敵機がレーダーから消えると。つまり、現代の対空戦ではレーダーで先に敵機を捕捉したほうが勝ち。敵機の機影を目にすることは無いのです。
現在、世界最強の戦闘機は米国空軍のF22。こいつは相手のレーダーに映らないステルス戦闘機です。レーダーに映らないのですから、対空戦や対艦戦で負けることがありません。軍事演習でF15が束になってかかっても、まったく歯が立たないそうです。

F22から発射されたミサイルが、いきなり目の前に現れるかもしれない恐怖。そこにF22がいると思えば、敵国の戦闘機や艦艇はうかつに出撃できません。
これぞ抑止力。敵国が攻撃を躊躇するに足る、充分な説得力があります。
一方、海のステルスは潜水艦です。海中深く潜む潜水艦を、敵国が発見することは難しいでしょう。そこに潜水艦がいることの恐怖。敵国の艦艇が空母であれ軍艦であれ、自由な航海はできないのです。
さて、中国が尖閣を攻めてくると心配するムキがありますが、東シナ海の制空権、制海権は米軍(+自衛隊)の支配下にあります。尖閣に人が住んでいるのならともかく、いったい何が心配ですか?
仮に、海上保安庁を上回る武力で、数百人の中国人が尖閣に上陸したとします。大変なニュースになるでしょうが、困ることはありません。
中国人がそこで駐留を続けるには、武器や弾薬、水や食料、燃料などの供給が必要です。ところが、東シナ海を支配しているのは米軍(+自衛隊)です。中国本土からのロジスティックを断たれてしまうと、駐留を続けることはできないのです。
中国人が尖閣に上陸したとたん、普天間飛行場からオスプレイがパタパタ飛んで行くと思ってる人は勉強が足りません。尖閣で地上戦を始める必要がありますか?
そこに居たいのなら、半年でも1年でも魚や貝を採って暮らしなさい。小屋を建てたり、五星紅旗を掲揚してもよろしい。しかし、中国本土からのロジスティックが成立しない限り、早晩引き上げるしかない、て言うか、海上保安庁の巡視船に乗せてもらうしかないのです。
三万歩くらい譲って、海兵隊が尖閣を目指すことがあったとしても、次の手順が必要です。
(1)佐世保の強襲揚陸艦をうるま市のホワイトビーチに移動させる
(2)嘉手納弾薬庫から武器や弾薬を運び強襲揚陸艦に積む
(3)普天間飛行場のオスプレイやヘリコプターを積み
(4)海兵隊の兵士を乗せる
(5)尖閣に出撃
(6)ハワイや横須賀から護衛艦隊を派遣する

繰り返しになりますが、尖閣が占領されても、オスプレイが普天間飛行場から直ちに発進することは無いのです。
さて、沖縄の海兵隊に抑止力があり、尖閣有事に不可欠の存在と考えてる貴方。嘉手納のF22や東シナ海に潜伏中の潜水艦に匹敵する抑止力が海兵隊にあると言うのなら、その根拠を言いなさい。
尖閣有事の際、普天間飛行場から直ちにオスプレイが飛んで行くと思ってる貴方。オスプレイが尖閣に向かう目的を言いなさい。
「辺野古移設が唯一」、「海兵隊の抑止力」、「尖閣有事への対応」なんて、まったく根拠無し。政府にだまされては駄目ですよ。
そんなことより、尖閣有事の際、日本政府には、毅然として中国軍に立ち向かう気概があるんでしょうか。そこがどうにも心配です。打つべき手を打たず「外交ルートを通じて厳重に抗議した」なんて言いかねませんからね。
それでは中国に尖閣の実効支配を許してしまいます。それこそが中国の狙いなんですよ。