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首里末吉町のそば屋「しむじょう」の入口です。
この石垣が築100年で、母屋(国の登録有形文化財)が築150年。そばの料金はちょと高めですが、美味しいそばを食べながら琉球王朝の時代に想いを馳せていただきたい。
さて、この日はそばを食べに来たのではなく、近くにある井戸の見学です。しむじょうから道を挟んだ向かいに一つ。その道沿いに西に一つと東に一つ。三つの井戸が並んで残っています。
(1)イリヌカー
しむじょう前の道を西に数十m歩き、階段を下りると、井戸へ続く石畳道がありました。
別名が「大樋川(ウフヒージャー)」。その名の通り立派な井戸です。
今も現役の井戸で、その湧き水は末吉公民館で散水などに利用されてるそうです。
井戸の奥にグスクの門のような形状の湧泉が見えますね。奥に向かって1.5mほど掘られていて、その内部空間にも石組みが施されています。
この湧泉を得るために、斜面を掘り崩し、垂直に近い壁に石組みを施すのですから大事業です。
河川の少ない沖縄ですから、昔は木の幹に縄を縛って、枝葉や幹を流れる雨水まで溜めていたそうです。ところが、そんな水にはすぐにボウフラが湧いてしまうので、頼りになるのはやはり井戸。いくら大事業になろうと、井戸が無いと生きてゆけません。
(2)ナーカヌカー
しむじょうの向かいにあるのがナーカヌカー。湧泉とその前の踊り場が無ければ、道路の側壁に見えてしまうでしょう。
この井戸は既に枯れていますが、なぜ枯れてしまったのか不思議です。上の道は幅が狭く、向かいがしむじょうで、その裏手は末吉の森です。そうすると、やはり道路工事が原因ですかね。
湧泉の部分に近づいてみました。
湧泉の奥行きは5mもあるそうです。つまり、道を横切ってしむじょうの敷地下まで到達してるということ。ナイチの井戸は縦に掘り、沖縄の井戸は横に掘る。
東西に水量の豊富な井戸がありながら、あえてこの場所に深い井戸を掘ったのは新垣家(屋号が下門:しむじょう)かもしれません。つまり専用井戸ってこと。それは次回そばを食べた時に聞いてみましょう。
(3)アガリヌカー
しむじょう前の道を今度は東に数十m歩くと、井戸に下りる石段があります。
井戸の規模はイリヌカーに劣りますが、なかなか趣のある佇まいです。葉っぱなんかが散らかってますが、そこは読者の皆さんの脳内で画像処理の上、消していただきたい。
末吉の村井戸だそうなので、おそらくこの井戸だけでは水量が足らなくなり、後に大規模なイリヌカーを造ったのだと思います。
沖縄の集落には公民館があり、自治会が組織されています。自治会長は地区長と呼ばれ、集落によってまちまちですが、それなりの責任と権限が与えられています。
例えば、私が住む国場の自治会は広い土地を所有していて、そこに賃貸マンションを建てたり、賃貸駐車場にするなどして収入を得ています。自治会費はいらないんじゃないのかな。知りませんけど。
辺野古3区では、自治会が基地容認と引き換えに数千万円の現金を国から受け取りましたね。だから、ナイチの自治会とは違うんですよ。
沖縄の自治会には三つのタイプがあります。住民が原則として加入を求められる自治会と、加入がまったく任意な自治会。そして三つ目は、古くから集落に住む人しか加入できない自治会です。
三つ目の自治会はいくつかの門中で形成されていて、その一族でないと加入できません。その自治会は土地や建物(御嶽や井戸なども含む)など集落の財産を長年にわたって守ってきました。また、その財産から得られる収入を集落に還元してきました。
そこへ最近になって他所から引っ越して来た人が自治会に加入して、その利益を享受していいってことにはなりませんよね。
私が言いたいのは、そのような自治会は伝統行事をきちんと継承し、集落の財産を大切に守ってきたということ。各地の集落を散歩することが趣味の私にとっては、たいへんありがたいことです。
血縁者だけで形成される自治会を良いとか悪いとか私は言ってませんからね。そんなこと、モノを知らないナイチャーが、うかつに口にするもんじゃありませんてば(笑)