来沖したひよこさんと本部の桜を見に行く途中、名護市役所に寄り道しました。
東京で建築士として働いている私の次女が、名護市役所の庁舎を「憧れの建築物」と言うので、親父が見学に向かったわけですね(^^)
写真は北側から見た庁舎。
ここを訪れた人達が古代遺跡とか陸の珊瑚礁などと呼ぶ特徴ある造形。庁舎北側はアサギテラスと名付けられています。
そのアサギテラスに立ってみました。
沖縄の集落の中心にある広場をアサギと呼びます。アサギテラスは人々が集まる空間として設計されていて、市民はいつでも(閉庁時であっても)この風通しの良い日陰を使うことができます。
市役所の庁舎は役人のものなのか市民のものなのか。アサギテラスは市民ファーストの意思表示なんですね。各自治体の庁舎をそんな視点で観察すれば、行政の姿勢を推しはかることができそうです。那覇市はどうなのか。沖縄市はどうなのか。
庁舎南側に移動しましょう。
壁面に設けられた台座には56体のシーサーが置かれていました。名護市の集落数55に名護市役所を加えた数字です。シーサーの劣化が進み落下が心配されたことから、残念ながら、つい最近撤去されました。
戦後の沖縄では米軍が持ち込んだコンクリートブロックが急速に普及しました。台風に負けない強度がありシロアリにも強かったことや材料の砂が容易に入手できたことがその要因と言えるでしょう。
名護市役所庁舎の柱や壁面の全てがコンクリートブロックで建設されています。コの字のコンクリートブロックを組み合わせて、その中に鉄筋コンクリートを施した柱。日除けとなり、風通しを良くする花ブロックの壁。
沖縄の代表的な建築材料であるコンクリートブロックの採用は庁舎を身近な存在に感じさせます。
こちらは、エレベーターが無い時代に利用されたスロープ。今でも郵便配達のバイクなどが、ここを駆け上がります。
名護市役所の入口です。雨が降り始めたので、庁舎内に逃げ込むひよこさんww
庁舎内は2m四方の「風の道」が南北に貫通しています。南からの風がそこを吹き抜け、50cm四方の穴から事務所内に涼風が流れ込みます。
これはエアコン普及前の冷房装置。素晴らしいじゃないですか。
さて、一通り名護市役所庁舎の見学を終えました。ここで、名護市が庁舎建設にあたり、全国の建築家にコンペを呼びかけた文章の一部を紹介しましょう。
本競技の目的は、次のとおりである。
すなわち、沖縄の地域特性を体現し、かつ要求される諸機能を果たすことが出来るとともに、市のシンボルとして長く市民に愛される市庁舎を建設するための基礎となる案、および敷地全体計画のすぐれた構想案を求めることにある。
また、本競技を公開にすることの意義は、「沖縄における建築とは何か。」、「市庁舎はどうあるべきか。」という問いかけに対して、それを形姿として表現し、実体化しうる建築家とその案を広く求めることにある。
従って、すでに十分な実績を残している建築家はもとより、これから頭角を現すであろう気鋭の建築家で、地域の建築について志を同じくする方々の積極的な提案を期待するものである。
この文章は沖縄県内の各自治体が共通して心がけるべき内容と言えます。
大きなお金が動く庁舎の建設で、そもそもコンペが行われなかったり、コンペに見せかけた出来レースが横行する中、名護市は公正にコンペを呼びかけ、それに応えた提案を採用しました。
庁舎建設のコンペを勝ち抜いた建築家集団主力メンバーの写真です。
皆さんいい表情をしていますね。こんなに若い建築家だからこそ、名護市のリクエストに応えることができたのだと思います。
名護市役所庁舎が竣工した昭和56年は私が社会人になった年です。それから40年あまり。名護市では新庁舎の検討が始まっているそうです。
名護市には40年前と同様のコンペを実施いただきたい。そして、私の娘をはじめ、世界中の建築家が憧れるような新庁舎を建設していただきたい。どうかよろしくお願いします。