沖縄には46の酒造メーカーがありますが、その建物のほとんどが沖縄戦で焼失し、戦前の建物が残っている酒造所はここだけです。
一見、建物が新しく見えるのは、国の重要文化財に指定され、改修工事を行ったため。改修前はこんな建物でした。
酒造所に隣接する経営者の私邸は伝統的な沖縄古民家で、こちらも併せて国の重要文化財に指定されました。
さて、沖縄戦で破壊された名護で、この建物だけが無傷で残ったことには理由があります。
私邸の梁に残る英語はOfficer's quarter。将校宿舎を意味します。
つまり、米軍が名護の駐留拠点とするために、わざとこの建物を爆破しなかったんです。当時の写真を見せてもらいました。
米軍は占領した後のことまで考えて爆撃してたんですね。くそ生意気な。
まあともかく、そんな理由で戦火を免れた津嘉山酒造所でしたが、昨年11月に再び存続の危機を迎えました。隣接する民家が火災を起こし、全焼したんです。
私は今、全焼した民家の跡に立っています。
正面には津嘉山酒造所の高い塀がありますが、この塀だけでは延焼を防げなかったでしょう。
火を防いだのはクルチ(左)とフクギ(右)の巨木でした。枝や葉を真っ黒に焦がしながらも、酒造所にふりかかる火の粉を防ぎました。しかし、それは偶然ではありません。津嘉山酒造所創始者の「備え」が、百年近くの時を経て役に立ったということ。
風を防げるってことは火も防げるんですよ。防風と防火。素晴らしいですねぇ。