JUGEMテーマ:地域/ローカル
農連市場の一角。市場に向かって、あるいはお尻を向けて、沢山の車が停まっています。
今朝早く、私が豆腐屋のヨシエさんと喋っていたら、停車中の車が猛烈にエンジンを吹かし始めました。
冗談でやってるのかと思ったら、ますますエンジン音が大きくなり、次の瞬間、急発進した車は狭い道路を横切り、仏壇屋前の電柱に激突したのです。
車を見れば、誰が運転しているのか、わかります。
「あのオジぃ、何してる!!」と、私が救出に向かおうとすると、今度はバック。惣菜屋の前に置かれたコンクリートブロックを押しのけ、商品台に接触したところで車は止まりました。それから、再度急発進し、同じ電柱に2度目の激突。
やっと車が落ち着いたので、一人のおじさんが助手席から車に入り、サイドブレーキを引きました。私は運転席を開け、エンジンキーをオフに。
「だっ、大丈夫ねっ!!」と声をかける私と、エンジンキーをオンにしようと、力を入れるオジぃ。
エンジンキーを取り上げ、数人でオジぃを車外に引きずり出しました。
人通りの多い時間帯でしたが、幸い怪我人は無く、仏壇屋も惣菜屋も被害無し。
しかし、うまく電柱に命中したものです。あれが左右に外れていたら、仏壇屋の商品被害だけでなく、家屋崩壊もありえたでしょう。
惣菜屋の前に置かれたブロックは、腰掛けるのに丁度良いくらいの大きさで、一人では動かせないほどの重さです。防波堤のように二つ並んでいたブロックは「ハ」の字になりました。
「なるほどなぁ。」
このブロックの役割を、今朝、初めて知りました。
オジぃに外傷は無く、会話もできました。
オ「あれ、ちょっとグヮー、吹かし過ぎたさぁ。」
C「ちょっとグヮーじゃないだろっ!!」
その時です。市場の人達がオジぃのまわりに集まり、口々に、
「大丈夫ねぇ。」
「今朝は調子悪そうだったから。」
などと、オジぃを気遣うのです。オジぃを責める人はいませんでした。
このオジぃは「運び屋ぁ」と呼ばれていて、これを届けてとか、あれを持って来てとか、ちょっとした用事を引き受け、違法でしょうが、人を乗せることもあります。
つまり、数十年来の市場の仲間。この心温まる光景は、考えてみれば当然と言えます。
オジぃによると、今朝は仕事が終わった市場のオバぁを、自宅まで送る約束をしていたと。
その時です。そのオバぁが現れ、前後が大破した車に乗り込もうとしました。
それを阻止する市場のメンバーと、事態を飲み込めず「エー、邪魔サンケー!!」と怒るオバぁ(笑)。
皆でオバぁをなだめて、タクシーを呼ぶことになりました。
朝の配達が終わった後、オジぃの様子を見に行くと、自分で運転して帰ったと。
「ハーァ??」
よくまあ、そんなことを。猪を街に放すようなものです。しかし、市場のおばさんは「大丈夫そうだったよぉ。」と。
この人達は、優しいのか冷たいのか。よくわかりません。
某青果店のお母さんは、この「運び屋ぁ」を病院通いなどでたまに使います。
二度と使わせてはいけないと考えた私は、某青果店のお父さんに今朝の様子を説明し、お母さんにはあれを使うなと伝えました。
すると、仲間意識のあるお母さんは、
「あのオジぃなら、さっき、この前を通ったさ。もう大丈夫よぉ。」
と。
もう、好きにしなさい(笑)。
こちらは、復旧作業が終わったブロック。
車が衝突し、かなり欠けてしまいましたが、欠けた部分が左のダンボールにきちんと集められていました。
今朝の事件は、これで何も無かったことに(笑)。
「老人社会の闇」という言葉が頭をよぎります。
スーパーで買い物するような緊張感ではまったく駄目ってことが、今朝、よ〜くわかりました。
市場へお越しの皆さん。自分の身体は自分で守りましょうねぇ。